影の向こうに

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私の名はミスト。灰色の毛並みを持つ猫で、今日もまた、日向の心地よさを求めて壁のそばに佇んでいる。柔らかな陽射しが私の小さな体を包み込み、幸せな気分にさせてくれる。外の世界は賑やかで、時折聞こえる鳥のさえずりや、通り過ぎる車の音が私の好奇心をくすぐる。だが、ここは私の特別な場所。静けさと安心感が、私を優しく包み込む。

ふと、遠くから小さな声が聞こえた。子供たちの笑い声だ。その声には、無邪気さと楽しさが溢れている。私はその音に耳を傾けながら、目を細めて想像する。彼らが公園で遊んでいる姿や、木の下で昼寝をしている子犬たちの光景が浮かぶ。私もその輪に加わりたいと思うが、壁のそばは私の安全地帯。ここでは、誰にも邪魔されず、自分のペースで過ごせる。

すると、ふと目の前に小さな蝶が舞い降りた。美しい色彩に心を奪われ、私はその動きに見入る。蝶は私の周りを優雅に旋回し、まるで私に何かを伝えようとしているかのようだ。無邪気なその姿に、私は思わず手を伸ばすが、蝶はすぐに空へと舞い上がった。

一瞬の出来事だが、その瞬間、私は気づく。遊びたい気持ちや、外の世界への憧れが、私の心を豊かにしていると。たとえ今は壁のそばにいるとしても、その想いは決して消えない。私は、ここで待っている。いつか、また新しい冒険が私を呼ぶ日を夢見て。

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