流浪の詩

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冷たい灰色のコンクリートの上で、私はただの影のように過ごしていた。誰も私を気にかけない。人々は忙しそうに通り過ぎ、私の存在に気づくことはない。とはいえ、私は彼らの生活をじっと見つめながら、彼らの物語を聞くのが好きだった。

一人の少女が近づいてきた。その髪は陽の光を受けて輝き、彼女の笑顔はまるで私の心に暖かさを運んでくれるようだった。彼女は私を見つけ、少し驚いた表情を浮かべる。「こんにちは、白猫さん」と声をかけてくれた。私は彼女の目をじっと見つめ返し、心の中で小さく鳴いた。

少女はポケットから小さな缶詰を取り出し、私の前に置いた。香ばしい匂いが漂い、私はその匂いに引き寄せられるようにして近づく。彼女は優しく微笑みながら、私が食べるのを見守ってくれた。食べながら、私は彼女の姿を目に焼き付けた。彼女の笑顔が、私の孤独を少し和らげてくれる。私の小さな心の中に、温かい灯りがともったようだった。

しかし、食事が終わると彼女は去っていく。私はその後ろ姿を見送るしかなかった。彼女の影は、私の心に深く刻まれ、再び灰色の世界に戻る。しばらくは彼女の温もりを思い出しながら、コンクリートの上で静かに佇む。流浪の猫としての運命は変わらないが、今は少しだけ、幸せな思い出を胸に抱いている。

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