
ここが、僕の見張り台だ。
リビング全体が見渡せて、敵(掃除機)が動く気配もすぐに察知できる。
それに──この高さは、何よりも誇らしい。
「またそんな高いところに登って……降りられるの?」
人間が下から心配そうに見上げる。
フッ、愚問だな。
降りるなんて簡単さ。
それより、僕はこの場所から人間の行動を監視するのが楽しいのだ。
水を飲む、歩き回る、座る……何をするにも、大きくて不器用
まったく、よくそんな動きで生きていられるものだ。
「気をつけてね」
人間はそう言って、去っていった。
ふむ……そろそろ僕も動くとしようか。
と、その時だった。
前足を少し動かした瞬間、思った以上にグラリと揺れる感覚。
……ん?
まずい。ここ、思ったよりも不安定では?
一瞬の緊張の後、僕は何事もなかったかのように身を低くする。
落ち着け。王として、優雅に、冷静に。
大丈夫、まだこの城は僕の支配下にある──たぶん。
僕はそっと前足を動かし、慎重に降りるタイミングを見計らうのだった。