至福の時間

「……そこ、もっと。」

僕は喉をゴロゴロ鳴らしながら、人間の手に顎を押し付ける。
絶妙な力加減で、指がふわりと毛をかき分け、僕の一番好きな場所を撫でていく。

「気持ちいいねぇ」
人間が笑いながら言う。

あぁ、それ以上の言葉はいらない。
僕はただ、この瞬間を味わうだけだ。

昔は、こんなふうに撫でられるのが少し怖かった。
いつでも警戒し、触れられるたびに緊張していた。

でも、この人間は違った。
無理に抱き上げることもなく、僕のタイミングを待ってくれた。
少しずつ距離を縮め、いつの間にか僕はこの手を求めるようになった。

「ん~、ここが好きなんでしょ?」
人間の指先が、顎の下をゆっくりと撫でる。

うん、そう。そこが最高。
僕は目を細めて、ゴロゴロを最大音量にする。

こうして甘える時間が、僕の一番の幸せなのだ。

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