灰色の影を抱いて

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私は小さな灰色のタビー、まだ何も知らない子猫。白い壁に寄りかかって、温かい日差しの中で夢見心地に過ごしている。外の世界は、謎めいた音や香りに満ちているけれど、今はこの場所が私の全て。ふわふわの手足を伸ばし、目を閉じる。心地よい風が通り抜け、私の耳元で小さな囁きが聞こえた。「遊びにおいで」と。

何かが私を呼んでいる。私はその声に導かれ、壁から離れる。目の前には、色とりどりの葉っぱが揺れている小さな庭が広がっていた。うずくまっている虫たちを見つけると、狩猟本能が刺激される。小さな爪を立て、静かに近づく。驚いた虫はぴょんと跳ねて逃げていく。何だ、簡単じゃないか。私の心は高鳴る。

しかし、ふと気づくと、周りには誰もいない。私は一人ぼっち。壁の白さが、心の奥にぽっかりと穴を開けているような気がする。遊びたい気持ちと孤独感が交互に押し寄せる。そんな時、ふと見上げた空には、青い羽を持つ鳥が飛んでいた。その姿は自由そのもので、私もいつかあんな風に空を飛べたらいいなと思う。

夢を見ることは悪くない。次の冒険に出かける準備が整うまで、私はこの小さな世界で、心の中に小さな翼を育てることにする。どこまで行けるかはわからないけれど、私の心はいつも空を見上げている。

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