屋根の上の幻想

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高い屋根の上、ぼくは灰色のタビー、世界を見下ろす特等席にいる。柔らかな風が体を撫で、太陽の光が毛並みを照らす。下に広がる街は、ぼくにとっての広い遊び場。人間たちが行き交い、犬が吠える。いろんな匂いが混ざり合い、ぼくの好奇心をくすぐる。

でも、今日は特別な一日だ。いつもは大好きな日向ぼっこを楽しむぼくだけど、今日は少し冒険をしたい気分。慎重に足を進め、屋根の端に近づく。下を覗くと、目の前に広がるのは、色とりどりの屋根や庭、そして見慣れた通りの風景。ふと目を合わせたのは、向かいの家にいる小さな子供。彼はぼくを見上げて笑っている。その笑顔は、まるで僕の心を見透かすかのようだ。

「もっと高く飛んでみて!」彼の声が聞こえたような気がする。ぼくは彼の期待に応えたくて、ひと跳びする。空中を舞う瞬間、心が高鳴る。ああ、自由だ。ひらりと着地し、少しだけ自信を持ったぼくは、彼のためにもう一度跳んでみる。

風がぼくの背中を押してくれる。自由で、楽しくて、何よりも大好きなこの瞬間。心の中で、彼とぼくが一緒に笑っているような気がした。屋根の上から見る世界は、いつでもぼくを待っている。ぼくはまた、彼の笑顔のために、別の冒険を求めてこの屋根の上にいるのだ。

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