小さな夢のかけら

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灰色のコンクリートの床の上、僕は窓辺に佇む。日差しが斜めに差し込み、温かい光が僕のオレンジ色の毛皮を優しく包む。小鳥のさえずりが耳に心地よく、彼らの自由な飛翔を羨ましく思う。僕は自分の世界を小さくて大切なものにしている。ここにいると、時々、夢の中にいるような気分になる。

母猫と兄弟たちと過ごした日々は、今では遠い記憶だ。彼らと遊んだり、甘えたりした瞬間は、愛おしい宝物だ。今はひとり、静かな時間を楽しんでいる。コンクリートの冷たさは、時に寂しさを感じさせるが、太陽の温もりはその感情を溶かしてくれる。

しかし、今日は少し違う。窓の外に一匹の黒猫が現れた。彼は優雅に歩き、何かを探しているようだ。僕は興味を抱き、思わず窓に近づく。彼の目は輝き、まるで冒険に出かける準備をしているかのよう。僕もそんな風に、何かを求めて外に出てみたいと思う。自由を求める心が胸の奥でさざめく。

「もう少しだけ、待っていて」と心の中で呟く。彼を追いかけ、未知の世界へ飛び込む勇気が、まだ僕の内には眠っている。窓越しに見つめる黒猫の姿が、僕の心に新たな夢の種を蒔く。いつか、この灰色のコンクリートの床から、飛び立つ日が来ることを願って。

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