
ここが、僕の王国だ。
フワフワのソファ、陽だまりがちょうどいい角度で差し込む特等席。
この場所を手に入れるまで、どれほどの努力が必要だったか……人間には分かるまい。
少し前、僕の王座は危機にさらされていた。
「ちょっと、どいて?」
そう言って、クッションを直したいという理由で、僕をどかそうとする人間。
とんでもない!
僕はここを守るために、あえて動かないことに決めた。
猫とは、静かなる抵抗の名手なのだ。
人間は諦めて、僕の横にそっと腰を下ろす。
ふふん、勝ったな。
「仕方ないなぁ……」
人間はため息をついて、でも結局は僕の頭を撫でる。
指の間をすり抜ける感触が、心地よくて、思わず目を細めてしまった。
まぁ、悪くない。
ご褒美に、喉をゴロゴロ鳴らしてやるとしよう。
すると、人間がクスッと笑って僕の耳元で囁いた。
「今日も可愛い王様だね」
──その言葉を聞いて、僕は満足そうに小さく伸びをする。
人間の膝に片方の前足を乗せ、支配者としての貫禄を見せつけながら。
陽だまりの中、僕は王国の平和を感じながら、再びゆっくりと目を閉じた。
王国は、今日も安泰だ──。
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